──約半年後。


紅く色付いた木々の葉が舞う、11月上旬の朝。

出勤前の忙しい時間にもかかわらず、スマホの向こうからはのんびりしたお母さんの声が聞こえてくる。



『じゃあ、今度の日曜日会いに行くからね』

「うん。待ってるよ」

『何か必要なものがあったら連絡し──』

『縁ちゃん!』



しばらく話した後、お母さんの声を遮って叫ぶのはもちろん、相変わらずテンションの高い彼。



「お父さん! 久しぶり」

『調子はどうだ!? 日曜は僕も行くからね! ご飯しっかり食べて、絶対無理しないように、あと──』

『ちょっと、うるさいわよ健司くん』



興奮するお父さんを冷静に宥めるお母さん。

二人のやり取りに笑いながら、あたしはストールを首に巻き、玄関へ向かう。



『ごめんね、慌ただしくて。じゃあ、もう寒くなってきたから風邪ひかないように気をつけるのよ』

「はーい。お父さんに心配しないでって言っておいて」



話が終わると、ハタチ前後からすっかり定番となっていた、シルバーのパンプス

……の、隣のスニーカーに足をねじ込みながら、あたしは電話を切った。