抱えた膝におでこをくっつけるあたしに、舞花は優しく、けれどしっかりした口調で言う。



「人はそんなに強くなれないよ」



顔を上げると、舞花は穏やかに微笑んでいた。



「縁みたいに寂しく感じるのは当然のことだもん、自分を責めることないよ。むしろ寂しくならない方が問題でしょ。
縁の中で那央くんが必要不可欠な存在だっていうのは、那央くんにとって嬉しいことじゃないかな」



──“ずっと必要としててくれよ、俺のこと”


舞花の話を聞いていて、前那央に言われた一言が蘇ってきた。

……あたし、こんなんだけどいいのかな。

ちゃんと、那央が望むお嫁さんになれてる?



「縁、結婚する前に言ってたじゃない。『二人なら何でも乗り越えられそう』って」

「……言った」

「その気持ち忘れちゃダメだよ。ていうか、私だっているんだからさ。こうやって縁の避難所になってあげるから、大丈夫だよ」



温かな太陽みたいに包み込んでくれる舞花に、あたしは涙が出そうになった。