臆病者達のボクシング奮闘記(第三話)

 梅田は構わず話を続けた。

「さっきも言ったが、パンチを打つ時に目をつぶるのは致命的なんだよ。これから技を覚えて動きが良くなってもだ。ちゃんと練習している相手には、勝てる試合も勝てなくなる」

「分かりました」

「それになぁ……」

「それに何ですか?」

 話を続けようとした梅田だったが、途中で止めた。有馬に訊かれて梅田は時計を見る。


「……お前ら電車の時間があるだろうから帰っていいぞ」


 二人が練習場を出た後、飯島が梅田に近付いていった。

「梅田先生、なぜ話を中断したんですか?」

「あの二人に早く癖を直させたいと思ってるんですがね。……話だけだと伝わらないような感じだったんですよ」

「確かにそうですね。清水の奴は、『学校でも出来る場所はありますか?』ってすぐに訊いてきましたからね」