『錦、おいで』
『ぱぱあー!』
助走をつけて思いきり飛びつく
『えっお、おおう!?』
しっかり、力強くぎゅう、と抱き締められる
『あははっ』
私も負けじと首もとに腕を回してしがみついた
『錦、パパ、』
『あっ、ままあ!』
『おっ、百合!』
上品な笑みをたたえて此方を見るのは私のお母さん
腰まである長く艶やかな黒髪と膝が見え隠れする丈のスカートを風で揺らしている
『お茶にしましょ、錦の好きな羊羹あるわよ』
『本当!?やったあ!』
お父さんはそのまま私を抱きかかえてお母さんの方に歩いていく
『百合の入れたお茶は日本一だからなあ』
『ままのお茶苦いよー』
『ふふっ、錦はミルクにする?』
『うん!ミルクとあんこって最高!』
『えええ、そうかあ?』
幸せだった。
幸せだった、記憶。

