「ちょっと待ってよ…。」

私は耳を疑った。だが、私はこんな時に幻聴を聞けるほど都合のいい耳を持っていない。私はもう一人の私に、怒りをぶつけた。

「あのさ、何なの? 私に何の能力があるの!?」
「そう感情的にならなくてもいいじゃない。…まぁ、教えてあげる。とりあえず、あなたは猫娘なんかじゃないってことは頭に入れておいてもらえるかしら?」

もはや私は猫娘でもなかったらしい。

「あなたは雲外鏡っていう妖怪の一種なの。」
「雲外鏡…?」
「鏡の妖怪。人間を鏡の世界に連れ込んだり、鏡の中の人間を外の世界に出したりできるの。」
「おい、理奈は鏡の形なんてしてないだろ?」
「それが、あなたにはちゃんと鏡の部分があるのよね~。ほら、その目よ。」
「目?」
「あなたの目…普通の人と比べて、外の景色が映りこみすぎるの。まさか、それにも気づいてなかった?」
「気づいてるわけないじゃん。」
「…それで、あなたは私を鏡の中に連れ込んで、そして自分は外の世界に出たっていうわけ。」

そんなの、納得できるわけない。

私が妖怪で、どこからともなく現れたこの饒舌なのが人間…?

違う。絶対に違う。

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う…。

…でも。

もし、仮にそれが本当だとしたら…?

私は、頭の中である恐ろしい結論を導き出してしまった。

都樹と…別れなきゃいけなくなる。