鏡は窓のように薄く、私はすぐに鏡の向こう側に到達した。

「ん…?」

そこは、私の見慣れた我が家だった。

「何だ、幻覚か…。」
「違うわよ。」

再び声がした。

「さっきから何なの? …全く、姿を見せなさいよ。」
「こっちよ、こっち。」

声のする方を見る。そこは、鏡だった。そしてその鏡に映る私は…私を見て、笑っていた。

「ひっ…!」

私は驚きと恐怖で声が出なかった。

「大丈夫よ。あなたは少しの間ここにいればいいの。すぐ戻れるから安心して。」

それだけ言うと、鏡の中の私は姿勢を変え、今の私の姿勢になった。私が動くと、同じように鏡の中の私も動いた。

「な、何なの…?」

辺りを見回す。そこで、私は重要なことに気づいた。

全てのものが、鏡映しになっている。つまり、左右が反転しているのだ。

「えっ…?」

不審に思いながら、腕時計を見る。やはり左右逆だ。

「…とりあえず、学校行くか…。」

私はドアを開けるのに少し手間取ったが、開けることができた。

「行ってきま~す…。」

元気のない声が、足元に落ちて行った。