歌声は君へと




 ある日、それが変わり始める。




「貴族っていうのは大抵勝手に婚約させられたりするでしょう。あのとき、私は幼馴染みと婚約することになったの。父の計らいでね」




 父同士が友人だあったこともあるし、私とカイルが仲が良いことから、そんな話が上がった。そして実際婚約することになった。
 見ず知らずの人に嫁ぐよりも、私はそれでよかった。カイルのことが好きだったから。カイルもカイルで『イシュでよかった』といっていた。

 しかし、だ。
 そんなとき、同じ貴族である娘が入ってくる。
 それが、リーチェだった。

 彼女は美しい娘だった。そして彼女はカイルのことを愛していた。愛していたのに、カイルはリーチェよりも私を選んだというそれが、彼女を傷つけ、また憎悪を生ませた。何故、どうして。そんな思いを抱えた彼女に、私は嫌がらせを受けるようになった。
 堪えきれなくなってカイルに相談したものの、リーチェはそれを逆手にとるように、私を陥れたのだ。
 カイルは、信じてくれなかった。
 私は嫌がらせなんかしていなかったのに、カイルは冷たい目のまま背を向けた。




「私は何とか誤解を解こうとしたの。けどそのときあの子が……リーチェが姿を見せた」



 
 カイルの不仲を、義母にあれこれなじられながら、誤解は解いておきたかった。なのに、豪奢なドレス姿のリーチェが『何故』と呟く。

 ――――私が、彼を愛しているのに。
 風が吹く。不気味な風だ。

 目の前にいる赤髪のリーチェは、本当に美しい娘だ。化粧もして、私の目の前にいた。

 やめて。『可愛そうなイシュ』やめて『誰からも信じられず』ねぇ、だから『大切な人は消えて』やめて『全部全部、私のものに』やめて!
 それは、なんていうのだろう。
 



「全身真っ黒なフードの人が傍にいて、何か呟いたの。リーチェの手をナイフで傷つけながら」



 ―――――呪われてしまえ!