歌声は君へと





 男はそれをぼんやりと見ていて、次に私を見る。



「少し、待ってて。ご飯、持ってくるから」




 通じていないとは思うが、そういうとまた何となくいたたまれず笑顔で誤魔化して、部屋を出る。
 扉をしめて、ほっと息をはく。


 ……よかった。


 それは目を覚ましたということへもそうだが、それと…と自分の下半身を見る。鱗のようなそれは長く伸び、先端になると細くなるそれを見て、多少は驚いてはいたが、それだけでいられるだなんて予想外だ。

 剣やナイフを持っていたし、体つきからにして戦うことが出来る人だ。
 そんな人が、"化け物"を見て驚くだけで、しかも黙っているだなんて……なんか、変じゃないだろうか。

 多少、なんというか…あれこれ言われたりするだとか、最悪逃げようとするとか、そういうのを考えていた。

 こんな見た目では、下手したら殺されかねないというのは、わかっている。
 だから、色々と考えていたのだ。
 なのに、妙な反応だった。




「取ってきたよ!」

「ありがとう」




 台所、だなんていうにはやや使いにくいが、あるだけ感謝だ。

 キアラが野菜を綺麗に洗い、私が切り分けながら、調理していく。

 もっと味付けを何とかしたいのだが、人里におりることは出来ないので、私は買い物に行くことは出来ない。もっといろんなものかあったなら…そう思っても始まらない。あるもので、何とかしなくては。
 料理、だなんて大層なものじゃない。雑穀と野菜を混ぜた、粥だ。
 目を覚ましたばかりの体だから、このくらいでいいだろう。

 横でキアラが「いいなあ」というので、「夜ご飯にする?」と聞けば、「うん!」と返ってくる。たぶんそういうだろうなと思っていたから、少し多めに作ったから大丈夫だろう。

 キアラに器をとって貰い、粥を入れる。
 食べてくれるとは限らないけど、と少しばかり気になりつつ、「入るよ」と断って部屋に戻る。
 男はこちらを黙って見ていた。