歌声は君へと





 私も、驚いた。
 こんな反応、初めてだから。

 男性はこちらを見て、黙っている。なんだろう。というか、どうしよう。
 どうして黙っているのか。
 向こうも言葉、通じないことをわかったから黙っているのか。どちらにせよ、かなりピンチだ。


 ――――そんなとき、だ。



 どたどたどたどた!という音がして、「イシュー!」と呼ばれる。
 男もまた、突然子供の声がしたから僅かに表情を変えた。

 それもそうだろう。
 扉がひらき、「じゃーん!」と腕を伸ばして花束を差し出してにこにこと笑っている子供がいるのだから。
 子供というのは、大人の都合というか…そういうのは関係ないのだな、とぼんやり思った。




「あ、目が覚めたんだね。えっと……どう呼べばいいかな?」

「あ、えっと……お兄ちゃん、とか?」

「お兄ちゃん、良かったね!」




 はいこれ、とずいっと差し出された花束を、"お兄ちゃん"はじっと見ていた。キアラはキアラでにこにこと受けとるのを待っている。

 勝手に"お兄ちゃん"などとキアラにいってしまったが…良かっただろうか。
 それを確かめる術がない。だってそう、言葉が通じないようだから。

 キアラのにこにこ攻撃(に見えた)にやられたのか、花束を受けとると『――――』とまた何かを言った。

 何て言ったの、だなんてキアラに聞かれた私は、「異国から来たみたいなのよ」というと、さらにキアラの表情が輝く。ぱぁぁぁ、という感じだ。異国!と。森の生活で異国だなんていうのは使わない。子供のキアラから見れば、"異国"は夢物語みたいで興味津々なのだろう。

 私も多少は興味があるが、まずは「キアラ、畑からいくつか野菜取ってきてくれない?」と頼めば、うん、と頷いて部屋を出ていく。