歌声は君へと






 水を用意し、タオルを浸す。
 タオルをしぼって、額へと乗せる。しばらくは、熱も出るだろう。




「えっ…?」




 微かに唇が動いた。
 何かを言ったのだが、聞き取れず「もう一回言って」といってみる。男は僅かに目を開けてこちらを見た。




『――――』

「あの、その」

『――――』




 何かを言ったはずなのだか…。

 私にはなんと言ったのかわからない。何語だろう?
 わからなかったから、とりあえず大丈夫だとして微笑んで見せた。そしたら僅かに表情が和らいで、また目を閉じてしまった。
 
 困ったな。

 もし異国人で、しかもその母国語しか話せないなら意思疏通が難しい。
 危害を加えないこととか、そういうのを説明出来なくなる。それに…と私は下半身に続く長い体を見る。こんな姿を見たら驚くどころか気絶してしまうのではないか?

 ああ、本当、困ったな……。
 キアラに頑張って貰うしかない、か。

 気が重いまま、私はキアラのベッドを移動すべく動き始めた。
 


  * * *