その人はこちらに気づくと


   なにも言わずに小さく頭を下げた。


  〈ねーちゃんの知り合い?〉


  「ちがう。見たこともない。」

 
   そうこうしているうちに


   監督と私の母がグランドに入ってきた。


   なにか話しているようだがよく聞こえない。


   しばらくすると話が終わったようで、母が帰っていった。


  [はいちゅーもーく!こちら叶 一希(カノウ イツキ)くんだ]


   ああ、かーさんが連れてきた子かな?


  『よろしくおねがいします。』