なるべく意識しないようにして、ろくに頭に入らないくせに本をジッと見て、時々ページをめくる。
ガタッと音をたてて何故か私の正面の椅子に座る。
………………………………
また、私がつけた痕をゆっくりと触る。
痛いのかな。
私に、"お前のせいで痕が残った"とでも言いたいのか、ずっと触ってる。
「…………ごめん」
呟き、席を立つ。
本を返し、荷物を背負って図書室を出た。
那子、遅いな……
携帯を取りだし、那子に電話をかける。
……………………出ないな。
「倉野!」
げっ。
現社の田中先生だ。
校則にうるさい、頑固おやじとして有名。
校内、携帯端末の利用は禁止。

