その綺麗な腕を擦っていた。
…………"悠希、爪たてんな"
あ……私がつけた、痕を擦ってるんだ……
消えないのかな……
「………………」
ごめん。
心の中で謝る。
「……………………」
私が、あのときキスに夢中になって爪をたてなければ、夢は醒めなかった?
私が、好きだなんて聞かなければ距離をおかれることはなかった?
千暁……
放課後。
那子に言われた通り、図書室で本を読みながら待つ。
……全然、本の内容が頭に入ってこない。
ギギッと、古い図書室のドアを開ける音に振り返る。
「……あっ」
千暁だ。
普段、図書室になんて行かないくせに。

