先輩は自嘲的に笑って髪の毛を掻く。


「今、抱きつきたいのは誰? キスしたいのは誰?」


抱きつきたいのは……



「…………千暁」


「ほら、答え出た」



少しどや顔の先輩。


「行って、抱きついておいで」


ポン、と背中を押した先輩に弾かれるように立ち上がり、頭を深く深く下げた。


「ありがとうございましたっ……」


「うん、」


「先輩のおかげで……って、先輩?」


俯いて目頭を押さえる先輩。


「卒業式みたいなこと言ってないで早く行きな」


「はいっ、じゃあ、あの、」


「うん、俺でよければいくらでも話聞くから………」


「はいっ、よろしくお願いします…」