「無理、しなくていいから」
グラウンドの人たちから見えなくなった途端、ヒョイ、と抱き上げられた。
「ヒィィィッ」
たかっ!
「うわ、血ぃ押さえとけよ」
千暁のほっぺにポタリと落ちた、私の鼻血。
鼻血!
「ごっ、ごめん!」
「暴れんな」
すぐに保健室に連れていかれ、ベッドに座らされる。
「あら、すごい血」
保健医の先生にティッシュ箱を渡されて血を拭く。
「水瀬くんは、それは倉野さんの鼻血?」
「あ、はい」
千暁にもティッシュ箱を渡す先生。
「足挫いちゃったのね、今湿布貼るわ」
ガサガサと棚を漁る。
「……千暁」
「ん?」
「桜は……怪我してないかな」

