「……いいわけないでしょ。そこに張り紙してあんじゃん」
柱時計の下には『図書室内 飲食私語厳禁』と書かれた紙が貼ってある。
「つまりバレなきゃいいってこと?」
そういって七瀬は手に提げていた購買の袋から惣菜パンふたつとおにぎりふたつを取り出す。
そして馬鹿みたいに行儀良く「いただきます」と言ってきちんと手を合わせると、いちばんボリュームのあるパンから食べ始めた。
「崎谷さんどうしたの?……これ半分食べる?分けてもいいけど」
七瀬由太はあたしが睨んでいる理由を、そういう意味に解釈したらしい。
「……いらないし」
「崎谷さんってコンビ二派?購買あんま行かない?この唐揚げパンって、学校でいちばん人気でウマいよ?」
知るかよ。
ってか七瀬。
そんな顔に似合わない、見るからにハイカロリーそうなジャンクフード、うまそうに食うなよ。そうつっこみ入れてやりたい。
唐揚げも、かかってるマヨネーズソースも、油でコテコテ・テカテカで見てる方が胸焼けしてくる。
「ほんとにいいの?俺全部食っちゃうけど」
苛立つあたしに、七瀬由太は遠慮するなとばかりに食い下がってくる。
「いらないって言ってるでしょ」
「でも崎谷さん、お昼それしか食べないなんて午後腹減るよ?俺多めに買ってあるからなんか食べたいのあったら分けるって」
「生憎あたし小食だから」
「もしかしてデザートの方が欲しかった?エクレア、半ぶんこする?それとも……」
「七瀬くんさ。こないだからいったいなんなの?」
どこまでも続きそうな七瀬由太の無駄話をぶった切って、すこし語調を強めて聞いてやる。
あっというまに唐揚げパンを食べきった七瀬は、次に砂糖がたっぷりまぶされたバターもたっぷりなシュガートーストを手に取った。
大きなお世話だろうけど。すごい悪食だ。
「なんなのって?何が?」
七瀬は平和な顔してすっとぼけて、砂糖の塊みたいな物体に齧りついた。


