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にぎやかな渚の家で居候させてもらってから、4日目のことだった。

すっかり渚の家のあったかさとか居心地のよさに馴染んでしまいそうになっていたあたしを、一瞬で凍り付かせるような出来事があった。


『こんばんは。いつも妹がお世話になっています』


渚の家に、聖人が電話を掛けてきたのだ。あたしが水原家に匿ってもらっていることも、その電話番号もすべて把握したうえで、聖人はあくまでも余裕たっぷりにこう言ったらしい。


『ご迷惑をお掛けしていて申し訳ありません。今週末の土曜日にそちらに迎えに参りますので、どうかそれまで仁花のことをよろしくお願い致します』


電話に出たのは哉人くんだった。哉人くんから話を聞いてから、渚はすごくピリピリしている。そんな渚を気遣うことも出来ないくらい、あたしも緊張して混乱していた。

一生このまま渚の家にお世話になることなんて出来ないってはじめからわかっていたけれど、聖人との歪な関係をどうすればいいかなんて全然分からないままだ。

でもそうしている間にも一日一日と時間は経っていき、あたしは何の解決策も持たないまま、ただいつも通り学校へ行くことしか出来なかった。