* * *


「おい、崎谷」


嘔吐まみれになった服を脱いで、素肌の上から愛さんが貸してくれたジャージを着ていると渚が呼びに来た。


「開けて大丈夫か?今風呂出来たから入れよ」


汚れ物でいっぱいになったバケツを持ってふすまを開けると、渚が部屋のすぐ前に立っていた。


「……渚。この服とかタオル、どこで洗えばいい?」


渚はあたしの手から引っ手繰るように饐えた臭いのするバケツを取る。


「寄越せよ。とりあえずおまえは風呂先だろ。脱衣所に今姉貴が買ってきたパンツとか着るもん置いてあっから適当に使ってやれよ。この汚れモンは裏庭の水場ンとこ置いとくから、後で洗えばいいし」


そういってあたしを一階のお風呂場へと送り出す。



------ここが、いつも渚が使ってるお風呂なんだ。



すこしだけ落ち着かない気分で脱衣所で服を脱ぎ、古風な擦りガラスの引き戸を開けると、タイル敷きの浴室が目に入った。