「それにしても驚いたな。僕が向こうへ行ってる間に、ニカがえり子さんが持ってたマンションに1人で暮らすようになってたなんて」
「……あたしがここにいるって、なんでわかったの。ババアが聖ちゃんに教えるわけないし、どうやって知ったの……?」


和やかな世間話でもするような雰囲気で話しかけてきた聖人に、あたしが切り込むように言葉を返すと、聖人はさびしげにその顔を翳らす。


「………ニカは僕との再会があまりうれしくないみたいだね」



だって。

聖人はほんとうに心からあたしとの再会を喜んでいる様子だけど、あたしは。あたしは今、どういう顔をすればいいのか分からない。

一年前に起きたことをまるでなかったことのように振舞う聖人に、強烈な違和を感じている。




「………だって。だって聖ちゃんは、あたしのことを見捨てたんじゃなかったの……?」
「見捨てなかったから、今こうしてちゃんと迎えに来たんだよ」


聖人は微笑みながら言う。そしてかつてはあたしを安心させるために繰り返し繰り返し言っていた言葉を口にする。


「僕は君の味方だ。見捨てるわけがないだろう」
「………でも」

「この1年、ずっと君を迎えに行く準備をしていたんだ」


小さい頃のあたしなら、聖人のこの言葉に有頂天になっていたのかもしれない。でも今あたしが抱いているのは、嬉しさとは全然違う感情だ。