無意識の言動なのかもしれないけど。渚はあたし自身が自覚しようとはしなかった寂しさに無遠慮に踏み込んでくる。


------ほんとうにお節介なヤツ。



「……だから全然同じじゃないし。この顔、間抜けすぎで見ててイラっとするし」



こんな子供っぽいぬいぐるみなんて、全然あたしの趣味なんかじゃない。
あたしにも、あたしの住んでるマンションにも全然似合わない。


でも。手触りはふわっふわで気持ちいいから。


あたしはしばらく無言でサメに触り続ける。このやさしい手触りは、慣れない感触だ。思えばあたしはぬいぐるみを買ってもらうのは生まれてはじめてかもしれない。


こういう幼稚で可愛いものが欲しかったちいさい頃は、誰もあたしが何を欲しがってるのかなんて気にも掛けてくれなかったし、あたしも親の顔色ばっか窺って自分が欲しいものを欲しいとは言えなかった。

16になった今じゃ、なんだかぬいぐるみを買うなんて、自分がさびしさを持て余してることを認めるようで。クラスの女の子たちがお揃いでつけてるはやりのマスコットとか、雑貨屋で見かけたカラフルなぬいぐるみとか、かわいいと思って手を伸ばしかけても、結局買うことはなかった。


そうやって自分の内側にあるやり場のない気持ちを見過ごして諦めてきたのに。なんで渚はなんの気負いもない顔して、あたしの心に手を伸ばしてくるんだろう。



(よかったね)



小さかった頃のあたしに、心の中で話しかけてやる。