いい感じにリラックスしたその笑みがなんだか癪に障って、あたしは渚から目を逸らしながら文句みたいに言ってやる。


「………渚ってプレゼント魔?金欠になんないの、こんなの買って」
「はいはい、救い難く可愛げのねぇ台詞をありがとな」


渚は気分を害する様子もなく、軽い調子で受けあってくる。



「嘘でもありがとうくらい言えっての」
「ってか女に貢ぐの趣味なかったんじゃないの?」
「ねぇよ。けどこいつさ、おまえそっくりじゃん?」


それどういう理屈だよ。横目であたしが睨むと、渚はあたしの膝の上のサメをちょっと乱暴にボスボス叩きながら言う。


「お前の部屋って殺風景すぎっから。こいつでも置いとけばいいじゃん」


たしかに渚の言う通り、あたしの住んでるマンションにはなんの飾り気もない。


家具は必要最低限しか置いてないし、部屋の見える場所に置いてあるのは問題集とか参考書とか勉強道具くらい。

脱ぎっぱなしの服だとか使ったままの食器だとかで多少散らかっても、あたしが学校に行ってるあいだにハウスキーピングサービスの富野さんがきれいに片付けておいてくれるから、いつも室内はモデルハウス並みに整えられている。

快適だけど、それゆえに住んでいる人間の温度なんてまったく感じられない。

あそこはあたしの『砦』でさえあればいいのだから、べつに今までそんなこと気にも留めたことなかったけど。なんの悪意もない顔で、渚は無邪気に言ってくる。


「おんなじ顔が置いてあったら、おまえちょっとは癒されんじゃねえの?」