「………さっきごめんな」


あたしを自分の腕の中に閉じ込めながら、渚はあたしの耳元で謝ってきた。


「勝手に触ったりして。……おまえときどきすげぇ男に慣れてるみたいなこと言うから、前からちょいムカついてて。それで悪ノリが過ぎた。……泣くほどビビらせるとか、そういうつもりなかった。マジで悪かった」



渚は後悔した気持ちの強さだといわんばかりに、あたしの体をぎゅうっと抱き締めてくる。痛いくらいだけど、あったかくて、守られてるみたい。



人前で喧嘩して罵り合って、いちゃつくみたいに仲直りのハグして。ほんとのバカップルみたいだ。



でも心ごとあたしを捕まえようとする渚の腕はあまりに心地よくて。こんな観光地の大通りなのに、このまま渚に自分のすべてを預けてしまいたくなる。



------この腕に縋っちゃだめなのかな。



今だけならいいよね、って。そんな言い訳を心の中で呟いて、あたしは渚の体を抱き返した。