「ふぅん。七瀬由太、ほんとにニクちゃんたちの班、抜けて来たんだ。……じゃああたしは用済みでしょ。もう帰ればいい?」


あたしの問いに、渚は見るからに不機嫌そうな顔で吐き捨てた。


「………それだと由太にキレられる」

「どういうこと?あたしなんかがいる方がキレられるんじゃないの?」
「いいから。おまえここで由太待ってろ。俺はちょっと別ンとこでも行ってるから」


思ってもみない渚の申し出に戸惑った。


「は?なんで?渚は?」
「暇だし江ノ島の弁天でも拝みに行ってくる」

「1人で?そんなの班で行けばいいんじゃないの?」
「………だからそれじゃ由太がキレるっての」



あたしの方が不満なのに、渚の方がひどく不服そうな顔してそんなことを言う。



「話が全然見えないんだけど。どういうこと?」
「……フェアじゃねぇから、今日は午前午後の入れ替え制なんだよ」

「なにそれ。……ほんと意味わかんないんだけど」
「じゃあ少しは考えてみろよ、主席合格のご自慢の頭でな」



よくわからないけど。つまり渚は、あたしに七瀬とデートしろって言ってるわけ?



「渚、いつからあたしの飼い主になったの?……七瀬にペットレンタルでもしたいの?」



あたしの皮肉まじりの冗談に、渚は何も言わない。言ってくれない。