「………そういえば七瀬由太は?」


あともうひと駅で乗り換えると渚に告げられた後。すっかり頭の中から抜け落ちていたことを唐突に思い出した。


七瀬はあたしたちと同じ班で、さっき広間のどこかにいたような気もするけど。一緒に行動しなくて大丈夫なのかと今更ながら思った。



あたしの問いに、渚は意味ありげに笑う。



「ああ。あいつは空気読んだらしいぜ」



どういう反応をすればいいのかよく分からない言葉。固まっていると渚が吹き出す。どうやらからかわれたらしい。



「嘘。あの馬鹿、陸人と山根たちがいる班に引っ張られてった。午後から合流予定。つか意地でも抜けてくるつってるけど、あいつにそれが出来んのか」

「……ふぅん」


なんか渚に嵌められたっぽい。

それがあたしなのか、七瀬なのか分からないけど。



そうこうしているうちに乗り換え駅に到着して、「下りるぞ」と言って手を引かれたあたしは、そのまま次ぎの電車に乗っても渚と手を繋いだままになった。