----------ニカは、昔はもっと可愛かったのに。
ババアの愚痴を黙って聞いててくれたはずの聖人は、不意にあたしに言ってきた。
----------前はもっと素直だったし、こんな意地悪な顔してなかったのに。
聖人はいつでも何があってもあたしの味方でいてくれた唯一のひと。
ババアに反抗するために学校でトラブルを起こしたり、ババアが嫌う言葉遣いや下品な振る舞いをしたり、そんな悪いことばかりするあたしの傍にずっと居続けてくれた。
----------いつからこんな可愛げのない女の子になっちゃったんだろうね。
なのにその聖人に突き放すように言われて。
あたしはそのとき、今自分がいる場所が恒久のものじゃないんだということに初めて気付かされた。そして同時に、あんなに聖人が褒めてくれていた自分の顔も、どんどん変化していってしまうことに気付かされた。
その頃のあたしは、一見やさしげに見える聖人が、一度見限ったものに対してどれだけ冷淡な態度を取るか知っていた。
劣化していくあたしは、きっといつか聖人にすら見捨てられる。
聖人に見捨てられたら、あたしは友達も家族もいない、ほんとうのひとりぼっちになってしまう。
その頃聖人に依存しきっていたあたしにとって、それは恐怖以外の何物でもなかった。
クラスメイトとか、どうでもいいと思ってるヤツに言われてもなんとも思わないけど、聖人に『落ち目を迎えた女の子』っていう目で見られるのは、気が狂いそうになるくらいおそろしいことだった。
あたしを、聖人もろとも間違った道に突き進ませるほどに。
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