「弥生」


京がわたしの名前を呼ぶと、ピクリと指先が反応した。


昨晩わたしを翻弄した時と同じように、甘くて切ない声。


忘れなきゃと思うのに、忘れられない。


でも、いけない。


わたしは気を強く持つの、と自分に言い聞かせてホットサンドをまた千切る。


動揺を悟られちゃいけない。


わたし達は一晩だけの関係なんだから。


「……なんですか」


わたしはなるべく冷たく響くよう注意しながら、素っ気なく言った。


京が勘違いしないように。


彼に忘れてもらうために。