カツカツと乾いた音で板書された和歌は2つ。


《桜花 今ぞ盛りと 人は言へど 我れは寂しも 君としあらねば》


《もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし》


「さあ、まずは宮沢。一つ目の短歌を訳した上で出典と詠んだ人物を答えろ」


相良先生はめちゃくちゃな無理難題を押し付けてきた。


こんな歌、教科書にも資料にも載ってないのに!


わたしは焦って教科書をあたってみたけど、やっぱり載ってない。


電子辞書で調べようと開くと、相良先生から厳しい御言葉で使うなと命じられた。


麻美もわたしも当然和歌には興味ないからわからない。


そのまま授業が終わるチャイムが鳴ってホッとしていると、逃げようとする前に相良先生に先手を取られた。


「宮沢と望月は放課後進路指導室に来い。以上だ」


脱出できなかったし……。


もしかして相良先生評判のお説教とかかなあ。