あれ以来わたしと麻美は腐れ縁でずっと同じクラス。もちろん大親友と化してる。


高校生にもなってあんな不確かな約束に縋ってる自分が時々気恥ずかしくなる。


わたしは躊躇いながら小さく頷いた。


「不動産屋さんの次にバイト行って、その帰りにね」


わたしがそう答えると、麻美は「そっかぁ、遂に決意ついたか」と言い。


続けてわたしと麻美の頭に、バシバシと容赦ない教科書の洗礼が浴びせられた。


「望月、宮沢。進級がほぼ決まりだからって余裕綽々だな?
その余裕を短歌の訳で発揮してみろ」


眼鏡の奥からキツい目つきで睨みつけてきたのは、古文担当の相良(さがら)先生。


「今から板書する短歌をきちんと訳せ。訳せなかったら放課後に残れよ」


容赦ない相良先生のご指導に、麻美は「げー」と色気もない声を出す。


「授業中私語などするからだ。それとも小テストが望みか?」


相良先生は厳しい声音で2択を命じ、わたしたちは結局短歌の訳で妥協した。