この人はわたしとお兄ちゃんを引き離す存在なんだ、と。


お兄ちゃんはわたしから離れるんだ、と。


だから。


わたしは咲子さんに笑顔を向けてよろしくと挨拶した。


お兄ちゃんが望むなら、わたしはそれに応えなきゃいけない。


お兄ちゃんもわたしを置いてゆくんだね、と。わたしは独りなんだと苦しいほど痛感させられた。


わたしのたったひとりの最愛の人は、たったひとりの最愛の人を見つけたから。


それは悲しいことにわたしじゃなかったけど、わたしはお兄ちゃんを応援しようと決意したんだ。