愛なんてない




そして、俺は弥生と2人きりで一本のヒガンザクラの下にやって来た。


「弥生、覚えてるか? 俺とおまえが初めて逢った場所だ。あの時約束したよな? 必ず迎えに来ると……けど、おまえに約束したから俺はそばにいるんじゃない。
俺はおまえを……弥生だから求めたんだ」


俺は弥生に語りかけた。


20年前の約束は、決して気まぐれでなかったのだと。


お互いに寂しいから惹かれあった。それが出発点だった。


確かに……


愛なんて、なかった。


けれども。





ざあっと大きく揺れるヒガンザクラの花吹雪のなか、俺は弥生に告げた。