愛なんてない




弥生が意識不明になって1ヶ月経った頃、俺は弥生の兄である圭介に申し込んだ。



「弥生と結婚させてください」――と。




もちろんあの圭介が容易に首をタテに振るはずもなく。


特に咲子に見捨てられていた荒れていた時期、弥生すら奪うのかと詰られ怒鳴りつけられた。


だが、俺は諦めなかった。


日夜何かを土産に日参し、特に仕事がない土曜日は酒を持ち寄った。


最初警戒していた圭介も、腹を割って話すうちに少しずつ打ち解けていった。


もともと圭介は社交的で気のいい性格だから、気を許せば頼もしい友人へと変わる。


そして、2年掛けて俺は圭介から許しを得て、弥生と結婚した。