俺は、沢木弥生に。
過去に別れを告げた。
過ぎてしまえば泡沫のようだった夢のように幸せな日々。
もう葵はいないのだから。
俺の前に現れて受けとめてくれたのは……
他の誰でもない、望月 弥生なのだ。
ずっと、ずっと。
俺を支えてくれていた小さな春風のような少女。
気付いたのは、その縋るような瞳を見てからだった。
俺は、ずっと……。
ずっと弥生が。
やっと、自分の気持ちに気付いた。
どこまで鈍い俺なんだ。
愛がない、なんて。
愛はすぐ身近にあったのに。
弥生――
早く目覚めてくれ。
俺はおまえに伝えたいことがある。
たったひとことを。
たとえ一生を掛けても――。



