「相良先生、ブラシを使いたいのでカバンを取っていただけませんか?」


「ああ、待ってろ」


相良先生はカバンを持ったのかゴソッと畳が軋む音に続いて足音が響く。


「開けるから受け取れよ」


スラッと襖が開いてわたしのカバンを持った相良先生の手が突き出される。


やっぱり純情なんだな、相良先生。とわたしは気軽な気持ちでカバンの持ち手を持った瞬間――


いきなり右手の手首をがっちりと掴まれ、あっという間に部屋のなかに引きずり込まれた。





その間に着信音がぷつりと切れた。