愛なんてない




女性は米びつの引き出しを開き、いともあっさりと急須と茶葉を取り出した。


ドクン、と心臓が苦しくなる。


「湯呑みも……ホコリが積もってるし。見える部分だけ綺麗にするクセも変わらないわ」


愉しそうに言う女性は断りもせずやかんを火にかけ、ハッとしたようにわたしを見た。


「ご、ごめんなさい! 勝手にお茶を淹れようとして。ついつい昔と勘違いして」


昔……。


女性はわたしに慌てて謝り、せっかくだからと最後までお茶を淹れてくれた。


淹れ方も板についていて、溜め息が出そうになる。