抵抗をするのを忘れていたわけじゃない。
本当ならば大声で叫んで暴れれば、きっと相良先生は止めてくれると分かっていた。
普段は生真面目でわたし達に厳しいけど、芯から思い遣ってわざとそうしてるんだと知ってたから。
「……なんで抵抗しない?」
相良先生の低い声がわたしに降ってきた。
何かを耐えて押し殺したその声音に、わたしはやっぱりと相良先生の迷いを見た。
相良先生は本気でわたしをどうこうしようとしたんじゃない。
ただ感情の高ぶりを抑えきれなくてつい押さえつけてしまったんだって。
なぜかな?
わたし、相良先生なら大丈夫だと安心してた。
だから、怖くなかったし、アパートにもあがらせて貰ったんだ。
他の先生に同じようにされても、きっとわたしは断ったと思う。



