わたしは意識的に目を動かし、脱出できるルートを捜した。


そして。


京の腕を潜り抜けようとタイミングを見計らったけど、あっさりと捉えられて桜の木に体を押し付けられた。





「……なぜ、逃げる?」


京の口から放たれたのは、おおよそ予想外の台詞。


帰れよ、と言ったのは。迷惑って言ったのは、京じゃない!


平静になろうとしたわたしの胸が嫌な気配で波立つ。


「……相良先生には関係ありません」


わたしは名前ではなくわざとらしい呼び方をし、京を突き放した。