ふわりと香ったのは、京が付けてるらしい香水。

気まぐれな風が京を風上に置き、その香りでわたしを包み込ませた。


クラクラしてきそう。


暖かい日なたの香りが京の薫りと混ざり合う。


呼吸が乱れる。


鼓動が乱れる。


肌が、神経がざわめき立つ。


いけない、と幾度抑えようとしても。


京の気配と薫りとぬくもりだけで、体は意識を離れ狂いだす。


――ダメだ。


ギリッと軋むほど奥歯を食いしばった。


目に全神経を集中しようと務めた。


追い出そうとした。


京の存在を。