それは、突然突き出された京の両腕で閉じ込められて不可能になった。


ドン、と桜の木が揺れるかと思うほどの音が耳元に響く。


わたしを腕に閉じ込めたのが誰なのかわかっているからこそ、わたしは俯いて唇を噛みしめた。


両手はスカートを握りしめてシワが出来るほど力を込める。


いまさら、京がわたしに何の用があるというのか。


わたしは必死に自分に言い聞かせていた。


乱れる呼吸と心臓を落ち着かせようと、何でもない自分には関係ない人なのだと。


あの日のことは幻なのだから、と。