でも、いけない。 わたしは京に甘えに来たんじゃない。 ガチャンと鍵が開く音がして、開いた瞬間に香ったものは。 清水のように清涼感がある爽やかな香り。 ……やっぱり。 込み上げてくる熱いものを辛うじて堪え、わたしは笑顔を浮かべた。 「……望月……」 相良先生の顔が驚きに彩られた。 無理もないか。10日前に血迷って抱いた生徒。 しかもこんな真夜中にひとりで、大荷物持ってびしょ濡れで来たんだから。 「どうしたんだ、いったい?」