緊張感が高まって膨らんでゆくお兄ちゃんの怒りをわたしはどうすることもできない。





それを遮ったのは咲子さんの機転を利かせた一言。


「相良さん、弥生ちゃんを送ってくださってありがとうございました。お疲れでしょうからお茶でもいかがですか?」


流石は気が利く咲子さん、とわたしは息をついた。


婚約者の声を聴いてお兄ちゃんも幾分冷静さを取り戻したらしく、キツいほど握りしめたわたしの手を解いた。


「妹を送ってくださったそうですね。ぜひ上がっていってください」