「たかだかひとつの短歌すら訳せないおまえ等のおつむが悪いんだろ。

俺の授業で何を聴いてた?
おまえ等の耳は意味がないただの風穴か?」


相良先生の毒舌は相変わらずで、ムカッと来る。


「…………」


早く訳して解放してもらわなきゃ。

わたしはアルバイトだってあるんだし、忙しいんだから。


わたしはぶつぶつ言う麻美に取り合わず、辞書を捲り訳語を探した。


わたしが指された短歌は『もろともに…』の方。


あはれと思へ、は……。

古語辞典で一生懸命に調べて訳しているうちに、あっという間に下校時間が過ぎた。


わたしたちの学校は原則として7時までが下校時間。それ以降は先生の許可がないと残れない。


「あ~~もう! 先生、今日はいいでしょ!」


麻美がぶうぶう言うと、相良先生は腕時計を見て眉を寄せた。