「う゛~~わかんないよォ……イテッ!」


また相良先生の容赦ないど突きが麻美の頭に炸裂する。


「宮沢、ぶつぶつ言うエネルギーを使うなら手を動かせ。
だいたい授業をきちんと聴いていれば十分かるだろうが」


「はあい!」


麻美はシャープを手に唇を尖らせながら分厚い古語辞典を捲る。


今どき紙の辞書で調べろって、相良も横暴だよねって麻美が小声で愚痴って来た。


そりゃあ、わたしたちは中学校から辞書と言えば電子辞書。

だから、こんな何百ページあるかわからない辞書を目にしただけで気が滅入る。


わたしと麻美が呼び出された進路指導室に来ると、相良先生は山のように積んだ資料や辞書を参考にして短歌を訳せと言ってきた。