ほろ苦い大人な匂いで、ゆっくりと目が覚めた。
小さく聞こえるテレビ音。
起き上がると、ソファーに寄り掛かって床に座ってる駆琉。
「…駆琉…おはよ…」
「やっと起きた。具合でもわりぃの?」
「どうして?」
「こんな時間まで寝てるチビって初めて見たから」
ハッとして壁掛け時計を見るともうお昼。
昨日、ドキドキし過ぎて眠れなかったからだ……。
駆琉のせい!!
「駆琉なんて嫌い……。変に緊張するし、苦い匂いする…」
「あー、さっきタバコ吸ったからだ」
「うちに住むならタバコ禁止にするよ」
「良いわ、それで」
「え…?」
振り返った駆琉から、急過ぎる言葉。
「今日でここ出てく。今までサンキューな」
「嘘だ……」
「マジ」
前に言ってたよね。
新しい女が出来るまで…って。
せっかく楽しかったのに。
なんだか、鼻がツンとして喉の奥が熱くなった。
声が出なくて頷くことしか出来なかった。