慧の他愛のない話を聞いてると、いつの間にか入学式は終わってた。


ふぅ〜……慣れない環境疲れる。


ため息交じりにカバンを持ち上げたあたしに、慧が近付いて来た。


「想乃ってどこ住み〜?」

「すぐ近くだよ!」

「そっかぁー。駅使うなら一緒にメシでもどうかなーって思ったのに!」

「他の子当たってね?」

「可愛いから想乃がいい」


慧って女の子慣れしてる……。


こうゆう男の子こそ気を付けなきゃ。



もうこんな慣れない環境ツラ過ぎる。


これで慧がいなかったら、あたしひとりぼっち……。


なんだか胸がぎゅっと締め付けられて、喉が熱くなってきた。


無我夢中で階段を駆け上がり来た屋上。


重たいドアを勢いよく開けて、あたしはその場にしゃがみ込んだ。



「うっ……う〜っ…ぐすっ…」



あたしにここで戦う勇気はない。


泣くことしか出来ない弱虫。


こんな自分も大嫌いだ。



「泣くな。気分わりぃ…」


誰!?


見渡しても誰もいない……。