1日分の多忙な仕事をこなし、5時半までに全て終わらせた。


嬉しくて高鳴る鼓動をぐっと抑えて、叩いた副社長室の扉。



–––––––コンコン………


「はい。どうぞ」

「佐藤です。失礼します」



パソコンに向かいまだお仕事中…。


駆琉の背中側にあるのは大きなガラス張りの窓。


会社から見下ろす夜景はキレイだけど、副社長室から見る夜景だけは切なくなる。



恋人同士のあたし達が他人になる場所だから。



駆琉はパソコンを打つ指を止めて、意地悪っぽく微笑む。


「…昨日は随分と飲み過ぎた様で」

「すっ、すいませんでした…。片付けまでしてもらっちゃって…」

「ほんとに手のかかる部下だ」

「以後気を付けます……」


二人きりなのに仕事口調!?


なんだか悔しい……。



立ち上がった駆琉は、俯くあたしの腰をそっと抱き寄せた。


耳にかかる吐息がくすぐったい…。


「想乃…」

「ダメ!待って!駆琉……仕事中だよ!」

「良いから。どうせ二人なんだし」


言われるがままに抱きしめられた。


大好きな駆琉の体温に包み込まれる。