「玲奈。ドアを開けて?渡したいものがあるの。」

母からそう言われたのは、彼が死んでから数日後のこと。

完全に引きこもっていた私は、ろくに食事もせず、ただ泣くばかりでした。

「これ、裕人くんから。宛名があなたになってるわ。ポストに入っていたの。」

そう言って手渡されたのは、『玲奈へ 裕人より』と書かれた、彼からの手紙。

久振りに見る彼の字に、私はまた涙がこぼれる。



そっと手紙を開けて、中を見ると、そこに入っていたのは、一枚の紙。

少し乱雑な字で、弱々しく書かれた言葉は、私の心のドアをこじ開けました。

『玲奈へ

これを呼んでるってことは、俺はもう死んでるんだよな。

俺は数年前から癌になっていたんだ。

ずっと言い出せなくて、ごめん。

俺がもし死んだ時、この手紙を出してもらうように、親に頼んでおいた。

きっと、玲奈は読んでくれるって信じてたから。

玲奈。

俺は君が好きだった。

君が笑うたびに愛しい気持ちが溢れ出て、何度気持ちを言いそうになったかわからない。

けど、俺が気持ちを伝えたら、俺がきっと耐えられない。

君を残して逝く事実に俺はどうしても、耐えられないと思った。

勝手でごめん。

だから、手紙で俺の気持ちを伝える。

玲奈、愛してる。

もっと一緒にいてやりたかった。

友達作りが苦手な君だから、俺が側でずっと支えてやりたかった。

けど、それは叶わない。

俺は、玲奈がいつもずっと笑顔でいることを願ってるから。

だから笑ってな?

優しい君は、きっと泣いてるだろう。

けど、どうか笑ってくれ。

笑って前に進んで欲しい。

俺は君の幸せを心から願ってる。

臭いかもしれないけど、俺はずっと君のそばにいるよ。

ずっと見てるから、どうか笑って。

愛してる。

裕人より』