乱華Ⅱ





「じゃぁ失礼…しま、す」


その後ろ姿を眺めながら一応宮地に一言言って、足を動かそうとした。




「…前より表情豊かになったな」


私にしか聞こえないような小さな声。
その顔はバカにしたものではなくて、穏やかで暖かいもの。



“居場所は見つかったか?”



そして前にされた質問を思い出した。




「…お陰様で。私の居場所は見つかったみたい…ですよ」



多分、と付けたしくるり宮地に背を向け、一歩足を踏み出した。




「まぁ見た目あんなんだし、お前も苦労するかもしれねーけど、いい奴らだからな。そこはわかってやれ」



背後でそう呟く宮地は、担任ってだけで私には何の関わりもないと思ってたけど、こうやって私を気にかけてくれているらしい。




そしてタク達を見た目で判断するような、上っ面だけじゃない数少ない大人みたいだ。





この転校で私の人生は大きく変わったんだと思う。

今私の周りには優しい人で溢れていて、こんなにもこの居場所が私にとって心地いいものになるなんて、転校した日に想像できただろうか?






「わかってますよ。これでも一応」



普段口で悪態をついていても、根本が優しい奴らって事は私もちゃんとわかっているつもりだ。




廊下から「おい心行くぞ!」タクの声がして、私はその声の主の元へと早足で向かった。