話してる最中タクの眉間には深い皺が刻まれていて、梶さんも目線を下に下げて俯いていた。






「辛かったな」


話終わってタクが私の頭をぽんぽんと優しく撫でる。



そのリズミカルな動きが私にとって心地よくて、されるがままになっていた。






「うん。…でもなんか今すごくスッキリしてる」




なんでだろう?



今まで誰にも話さなかった事を聞いてもらって、心のつっかえがとれたみたいな感じになるのは







あぁ、私。



ずっと誰かに…話を聞いてもらいたかったんだ。




今まで誰にも…言えなかったから



その考えに至った私に勢い良く抱きつくイカツイ梶さん。


…おもわず足を滑らせそうになったんですけど。




「心ちゃん!辛かったな!!
あれだったら俺の事親父みたいに思ってくれていいからな!…いや、兄貴か!?」


こんなナリして瞳をうるうると潤ませながら、そんなことを言う梶さん。



「いや、遠慮しとく」



だけどごめんなさい。

私はそんなの梶さんに求めていません。



丁寧にお断りする私に、ショックそうな顔をした梶さん。




もう私たちの間に、辛気臭いような、微妙な空気は漂っていなかった。



パパ、ママ。
悲しみは完全に消えることはないけれど、これで少しは気持ちの切り替えができそうだよ。