無自覚な彼女




「じん~っ…早くぎゅ~!」


抱っこをせがむ子供のように両手を広げる。


「ちょっと待って」


「やだぁ…っ」


すぐに瑠花の目に涙が溜まる。


今すぐ抱きしめてやりたいけど、我慢しろ!俺!


すかさず、瑠花の額に自分の額を当てる。


「やっぱり熱はないな…」


熱が出ると子供みたいになるヤツは結構いるみたいだけど、そうではないらしい。


だったら、なんでこんなに可愛いんだ?


チラッと瑠花を見ると目が合う。


うるうるとした目で下唇を噛みながらまた、両手を広げた。


「はいはい…おいで」


瑠花を抱きしめるとギュッとシャツを握られる。

こういう、ちょっとしたことが男心をくすぐるなんてわかってねーんだろうな。


「迅のばかぁ………っ」


「はいはい…」


瑠花の髪を指で優しく梳く。