『紗耶香ちゃん、お誕生日おめでとー!!』


新部長、隼人先輩のかけ声に、


『ありがとうございます!』

と言うと、私は手にしたビールのジョッキを思いきって傾けた。



6月27日、
私、新谷紗耶香、
とうとうハタチになりました。


『…にがーい』

私が言うと、先輩たちが笑って、

『この初々しさがいいねぇ』

と言っている。



『さやえんどうはまだまだお子ちゃまなんだよな』


蒼太先輩はそう言うと、あんなに苦いビールをゴクゴクゴクと美味しそうに飲み干した。


いつもの居酒屋は今日も30人ほどのサークルメンバーで貸しきりになっている。

麻衣が、
『紗耶香、おめでとう』
と自分のオレンジジュースのグラスを私のジョッキに軽く当てる。

『麻衣、ありがとう』

私たちは微笑む。


それからも、次々に、サークルの友だちや先輩、後輩が私のところにやってきては、
『おめでとう』
と言ってくれて、私は最高にしあわせな気持ちだった。


ビールが苦い、
そのことに気がついた私は、酎ハイを飲んでみる。


『うわ、おいしい』
これ、ジュースじゃない。


『おいしい?良かった。これもおいしいよ』
そう美樹先輩に言われて飲んだのは、カシスオレンジ。
三月に引退した美樹先輩や一馬先輩たち四回生も、今日はお祝いに来てくれている。



『これもおいしいです』

そして私は…


『この、モスコミュールってやつ、下さい。』

『このサンセットってやつ、下さい。』






完全に飲み過ぎた…。